実店舗を構えて新規ビジネスを立ち上げるには、店舗の賃貸料や公共料金などの諸経費が必要です。またオンラインで小規模に商品を販売する場合でも、在庫の保管や商品の配送には費用がかかります。
ドロップシッピングのビジネスモデルなら合法であり、上記のような諸経費を大きく削減し、少ない費用で大きな利益を上げることも可能です。
この記事では、ドロップシッピングビジネスで成功を収めるために必要となる自治体や国の法令の知識について解説します。
ドロップシッピングは合法?

はい、ドロップシッピングは合法です。ストアの販売者が在庫を抱えることなく商品を販売できるビジネスモデルとして広く利用されています。顧客が商品を注文すると、販売者はその商品をサプライヤーまたはメーカーから購入し、商品はそのサプライヤーやメーカーから顧客に直接配送されます。ただし、他のビジネスと同様に、ドロップシッピングを利用する販売者は商品の販売に関して地域の自治体や国の法令、国際法等を遵守する必要があります。
法令に従っていれば、ドロップシッピングなら個人的な賠償責任のリスクをほとんど負うことなく、低リスクでビジネスを行うことが可能です。ドロップシッピングパートナーや外部のサプライヤーと契約を締結する際は、販売や配送、若しくは商品の安全性に関するトラブルに備えて、弁護士に契約の内容を確認しておいてもらうと安心です。
ドロップシッピングに関する法令を遵守する
ドロップシッピングビジネスを構築する際に遵守しなくてはならない法令等、知っておくべきことを以下に紹介します。
知的財産に関する法律
Eコマース事業者からよく聞かれる質問に「ドロップシッピングで訴訟が起こることはありますか?」というものがあります。他のビジネスと同様に、ドロップシッピングでも訴訟はさまざまな理由で起きる可能性があり、著作権法や商標法等の知的財産法の違反もその一つです。サプライヤーが顧客の注文に対して模倣品や海賊版を調達していた場合、販売者も商標法違反や著作権法違反に問われる可能性があります。サプライヤーとパートナーになるときは注意が必要で、倫理的に懸念がある場合はどんなケースでも慎重に扱わなくてはなりません。
商品の安全性に関する法律
オンラインストアで扱う商品がたとえ販売者自身によって生産されたものでなくとも、販売者も場合によっては製造物責任法の定めによって、顧客に配送された商品の安全性に関して責任を負うことになります。万が一、ストアで扱っている商品により顧客が人身損害を被った場合、販売者は訴訟などで損害賠償を請求される可能性があります。そのため、生産物賠償責任保険(PL保険)に加入しておくと安全です。
広告の真実性に関する法律
販売者には、景品表示法などの法令により、どんなマーケティング活動においても商品の内容や質を正確に表示する義務が課せられています。もし商品を購入した顧客が「ストアに表示されていた通りのクオリティでない商品が届いた」「詐欺だ」と感じた場合、サプライヤーではなく販売者に損害賠償を求める可能性が高いでしょう。
税金や開業・営業に関する法令
他の小売業者と同様に、ドロップシップ事業者も該当する消費税を徴収し、税務署へ納付する義務があります。
個人事業主として開業する場合は「開業届」を出し、必要に応じて「青色申告承認申請書」も提出します。個人事業主の消費税以外の主な税金として所得税や住民税があり、場合によって個人事業税の課税対象になることがあります。また、食品や輸入化粧品、中古品など、取り扱う商品によっては営業の許認可や届け出が必要になる場合があります。税金や行政機関の許可取得や届け出に関して不明点があれば、地域の法律や税金の専門家に相談してみましょう。
特定のプラットフォームに関するポリシー
Amazon、AliExpress(アリエクスプレス)、Etsy(エッツィー)、eBay(イーベイ)などのECプラットフォームは、ドロップシッピングで販売する商品において特定のポリシーを設けています。EC事業者は、その各ポリシーに従わない場合、法的な問題を抱えたり、アカウントを停止させられたりする可能性があります。
ドロップシッピングとは?

ドロップシッピングとは、オンライン小売販売におけるフルフィルメント戦略です。この戦略では、販売者が商品販売やマーケティング、カスタマーサービスを行い、外部の業者が商品の生産やフルフィルメントを処理します。
ドロップシッピングのビジネスモデルでは、ストアで受けた顧客の注文はサプライヤーに転送され、そのサプライヤーが注文品を梱包し、配送します。
ドロップシッピングは、オンラインビジネスを立ち上げて運営するのに必要な諸経費を低く抑えられるためEコマース事業者の間で特に人気です。
ドロップシッピングビジネスを始める理由

オンラインストアをドロップシッピングビジネスとして始める理由は、従来の小売業モデルに勝る多くの利点にあります。ドロップシッピングパートナーに煩雑な業務を委託し、販売者は特定の業務に集中できます。以下が主なドロップシッピングの利点です。
1. 初期費用を低く抑えられる
ドロップシッピングでは、ストアに在庫を補充しておく費用や、販売スペースに支払う料金が必要ありません。主な出費は、ドロップシッピングのサプライヤーからの商品購入費用で、通常は、顧客が注文した後のオーダーベースで行われます。そのため、販売者は理論上、在庫確保のための予算なしで運営することが可能になります。
2. 商品の原材料を調達する必要がない
ドロップシッピングのメーカーとパートナーを組む場合、販売者は直接商品を製造したり、物流を担当したりすることはないので、商品の原材料やサプライチェーンに関して心配する必要がありません。原材料や配送物流における価格変更などもパートナーが対応します。
3. 在庫保管のためのスペースがいらない
従来の小売店舗では在庫を保管しておくスペースが必要でした。生産や在庫管理、注文のフルフィルメントをドロップシッピングパートナーに外部委託することにより、これらの責任を負うことがなくなります。
4. 配送に頭を悩ますことがない
配送には物流に関する多くの問題がつきものです。ドロップシッピングパートナーは販売者の代わりに配送業者と協業し、顧客の注文した商品を効率的に発送します。
5. 商品の開発やテストが簡単にできる
販売者に代わって外部の業者にカスタムメイドの商品を生産してもらうというプライベートブランドでドロップシッピングを行うと、商品開発にかかる費用を減らすことができます。また、何件かのドロップシッピングサプライヤーに商品を作ってもらい、顧客がどのサプライヤーの商品を好むかをテストすることもできます。既存の商品の出来上がりに満足していない場合は、初めから新しい商品を作り直すよりも、他のドロップシッピングサプライヤーを見つけて生産を依頼する方が簡単です。
6. 本来の業務に専念できる
販売者は、商品の生産や注文のフルフィルメントを自分の業務から除くことで、ECビジネスに重要な要素であるマーケティング、ストアのデザイン、カスタマーサービスに集中できます。販売者の本来の仕事は市場をリサーチして、顧客を惹きつけるマーケティングをすることです。ひとたび購入者があなたのサイトを見つけたら、満足度の高いショッピングやスピーディーなチェックアウトを体験し、質の高いカスタマーサービスを受けることができるようなストアであるように管理しておきましょう。
Shopifyでドロップシッピングを始めましょう

Shopifyユーザーは、ドロップシッピングサプライヤーとストアを接続して自動的に商品リストをインポートしたり、顧客の注文を送信したりすることができます。Shopifyでのドロップシッピングの始め方を、今すぐ調べてみましょう。
*各国や個別の状況に特有の情報に関しては、法的な機関にご相談ください。Shopifyはこの記事の案内の使用や依拠による行為において一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
この記事は情報の提供のみを目的としています。この記事を読み、適切に利用することは自己責任となりますのでご了承ください。記事の内容は、法律、税金、ビジネスについて助言するものではなく、またその提供を意図するものではありません。法的事項の変更は頻繁に起こるためご自身で確かめ、必要に応じて法律、税金、ビジネスの専門家にご相談ください。地域の自治体や国によって手続きや法令事項が変わることがあります。Shopifyのプラットフォームを利用して商品を販売するには、ご自身のビジネスやお客様が属する管轄区域の法律を遵守する必要があり、Shopify利用規約、Shopify適正利用規約、その他該当するポリシーのすべてを守る必要があります。
まとめ
ドロップシッピングは、合法です。ただし、ビジネスを行うにあたっては自治体や国の行政機関の法令を遵守する必要があります。著作権法や商標法などの知的財産に関する法律や製造物責任法、また景品表示法などマーケティングに関わる法令、税金や開業・営業の許認可や届け出など運営に関わる法令などを遵守しなければなりません。
ドロップシッピングは、オンラインストアの販売者が販売、マーケティング、カスタマーサービスを受け持ち、商品生産や配送などは外部の業者に委託するというビジネスモデルです。これにより、在庫管理や配送手続きなどにかかる手間やコストを低く抑えられ、販売者は市場リサーチやストアのデザイン、カスタマーサービスなどの本来の業務に専念できるなど多くの利点があります。
この記事を参考に、ドロップシッピングでのオンラインビジネスに関わる法令や税務に対する事業者の義務を正しく果たし、安心してドロップシッピングビジネスの成功を目指していきましょう。
よくある質問
ドロップシッピングに営業の届け出や許認可の取得は必要?
場合によっては必要です。ドロップシッピングビジネスは小売業です。小売業を行うにあたり行政機関への届け出や許認可取得が必要な場合は、ドロップシッピングストアにも通常必要になります。
例えば、特定の商品を販売する場合には届出や許認可の取得が必要になります。ドロップシッピング自体に違法性はありませんが、必要な許認可を取得せずに事業を始めてしまった場合は違法となり罰則を受ける可能性があります。販売前に念入りに確認しておきましょう。
ドロップシッピングのデメリットは?
ドロップシッピングの主なデメリットは、売り上げの多くが通常外部の業者に支払われるため従来の小売業よりも利益率が低くなることです。また、販売者による商品の品質管理が難しくなります。外部業者が配送トラブルを起こした場合でも、ドロップシッピング事業者はカスタマーサポートを提供する責任があり、顧客からネガティブな評価を受けることもあります。
ドロップシッピングに最適な商品は?
ドロップシッピングは幅広い種類の商品に適しており、ペット用品、スマホアクセサリー、美容関連商品、アパレル、ベビー用品などがあります。これらの市場には、潜在的な顧客やドロップシッピングのノウハウを持っているベンダーが集まっています。
ドロップシッピングで扱う商品の消費税を徴収する必要はある?
国内取引の場合ドロップシッピングによる商品も消費税の課税対象になるため、消費税の徴収が必要です。
国際的な取引においては、関税や消費税などの税金の問題が複雑になることがあるため、法律や税務の専門家より適切なアドバイスを受けることが最善策になるでしょう。
文:Harumi Miyabayashi