2020年は新型コロナウイルスによるパンデミックにBlack Lives Matterのムーブメント、米国大統領選挙など、特にアメリカでは歴史的にも忘れられない一年となりました。しかしながら、どの事象を取り上げてもマイノリティや弱者の権利向上という今まで隅に追いやられていた課題が明るみになったように感じます。1月20日にはジョー・バイデン氏が新大統領に任命され、今後は分断されていたアメリカを一つにしようという動きが強まるでしょう。
カマラ・ハリス新副大統領の就任は本当の意味でこれから女性のリーダーシップが認められ、形を形成していくという物語の序章を感じさせるできごとです。彼女のファッションは常に話題で、カラフルなスーツに身を包み、しなやかながらも凛とした姿は女性として勇気付けられるパワフルな存在。コンバースのスニーカーを合わせたカジュアルな着こなしでの遊説は政治家のファッションとしても斬新で、親しみの湧くもの。あえてのカジュアルダウンで自分らしさを見せたスタイリングは今の時代を体現したスタイルです。コンバース姿で登場した米VOGUE誌の表紙は「ハリス氏への敬意にかけている」「クオリティが低い」などのクレームが相次ぎ物議も醸しましたが、色々と話題とインパクトがあり、米国民たちが今後の4年に希望を抱いているということが伺えます。それはとても素敵なことだなと思います。
出典 / VOGUE
日本では残念ながらアメリカに比べて女性のリーダーシップが遅れています。世界経済フォーラムによる2019年のジェンダー・ギャップ指数では日本は121位。先進国においては最下位という順位ですが、「女性が女性らしく生きられる社会」を目指し、フェムテックの市場も日本では急速に成長をしています。こうした動きからも、女性特有の悩みなどを男女問わず理解して行こうという流れは、日本でも女性のエンパワーメント向上に注目が集まっていることを意味しています。
欧米はフェムテック先進国
いまだに日本では女性が生理で体調が優れなくてもオープンにし辛い環境も多いと言われています。それでも2020年が「フェムテック元年」とも言われ、多くの吸水ショーツブランドが誕生しました。
アメリカは日本よりもフェムテックの隆盛が早く、2011年から2020年までの間に出資を受けたフェムテック企業がリサーチ会社Statistaによって発表されていますが、future familyにおいては過去10年で最高額の1億1800万ドル(約120億円)の資金調達に成功しています。アメリカでは約10年前から多くのフェムテック企業が誕生し、事業拡大を行なっていることがわかります。
2019年にはリサーチ会社Frost&Sullivanによると、2025年までにフェムテック産業が500億ドル(約5兆円)規模になると予想。アメリカをはじめ、ヨーロッパでもフェムテック産業は急成長している分野です。
2017年にはフェムテックに焦点をあてた投資ファンドPortfoliaをクリスティーナ・ジェンキンスがスタートし、不妊や乳がん、更年期障害など、女性が抱える悩みをサポートする会社に投資を行なうなど、フェムテック産業のサポートに力を入れていることが伺えます。そのため吸水ショーツや月経カップをはじめ、アメリカにはさまざまなフェムテックブランドが存在します。
2015年にスタートしたCORAはタンポンや生理用パッド、月経カップのサブスクリプションサービスです。同社は生理用品の販売を通じて、女性をエンパワーメントしたいという想いが強く表れています。創業からすでに1240万個の商品を世界中の150万人以上の女性に届けています。商品の75%は“BIPOC”と呼ばれる黒人や先住民、その他有色人種のコミュニティに寄付しています。売り上げの一部はケニアやインドの団体に寄付され、生理用品を購入できない貧困層の女性たちが学校に通うことのできない現状などもホームページで訴えています。
アメリカでは生理用品の価格も割高。生活必需品として免税になるべきが、免税にならない州もあり、抗議の声が上がっています。シリコンヴァレー拠点のMadorraは、今まで医薬品でしか対応できなかった膣環境の問題を医療機器によって改善しようという試みを行なうなど、アメリカには多岐にわたるサービスを提供する会社が出てきています。
フェムテック業界の急速な成長には以下のような理由が考えられます。
・女性のエンパワーメント向上
男女平等が叫ばれ、結婚や出産をしながらキャリアを積む女性も増えるなど、以前に比べ女性の生き方も多様化しています。そんな女性たちが女性らしさ、女性ならではの問題を恥じることなく受け入れ、前に進んでいこうという潮流がフェムテック産業を後押ししています。
・サステナビリティ的視点からも有効
コロナ禍において一層高まりを見せる環境問題。吸水ショーツや月経カップはサステナビリティの視点からも支持されています。環境保護に意識の高い女性たちが導入しやすい吸水ショーツや月経カップは欠品も多く、徐々に市場に広がってきています。
吸水ショーツのパイオニア、NY発のThinxにインタビュー
2013年にニューヨークで設立された吸水ショーツブランド「Thinx」は同マーケットではパイオニア的な存在として知られています。自社EコマースではShopifyのプラットフォームを使用。今後の展開やプラットフォームの使い心地になどについて伺いました。
Q.吸水ショーツの先駆け的な存在ですが、ブランドをスタートしようと思ったキッカケは?
1930年代以降、生理用品に関するマーケットで革新的なできごとはありませんでした。そのためThinxをスタートさせたのですが、生理と付き合っている人々は新しいソリューションを求めて長い間停滞していたことに気がつきました。
Q.吸水ショーツを使うメリットは?
吸水ショーツを使うメリットはいくつかありますが、ほとんどのお客様は、Thinxに切り替えることで快適さ、利便性、持続可能性を実現でき、そのことが気に入っているようです。
130万人のお客様からThinxのデザインはとても良く、通常の可愛い下着のように購入できるため、その体験も評価されています。さらに、私たちのスーパーテクノロジーは、最大5つのタンポンと同じ吸水量があるため、ほとんどの人は漏れや汚れを心配することなく、朝Thinxを着用して1日を過ごすことができます。
量が多い日のバックアップとして使用する場合、ナプキンやタンポンを交換する回数を減らすことができます。また、月経カップが正しく挿入されていないという心配もカバーしてくれます。
Q.Thinxの強みを教えてください。
最大45ml、または最大5つの通常のタンポンの吸水量をカバーする強力なイノベーションがあるブランドです。さらに、私たちは製品教育に重点を置いています。これはThinxを使用することで起こる行動の変化と思っており、下着の働きや多くの人の生理を改善する方法について多くの時間を費やしています。
また、環境問題にもフォーカスしています。非常に多くの人たちが使い捨ての製品を減らそうとしているので、Thinxは再利用が可能だということも愛されている理由のひとつです。毎年70億個のタンポンが廃棄されており、そのほとんどにアプリケーターが付いています。 Thinxに切り替えることで、海や埋め立て地に入る周期的な廃棄物の量を減らすことができます。
Q.Shopifyプラットフォームを選んだ理由は?
Shopifyは、ZendeskなどのCXヘルプデスクプラットフォームや私たちが現在使用しているヘルプデスクのRichpanel、その他のツールとうまく統合されています。 Shopifyの注文履歴や生涯価値などの顧客データを他のツールに組み込むことができるため、よりパーソナライズされたサービスを簡単に提供することができます。また、Shopifyの分析機能を使用して、顧客のショッピング行動に関するデータをすばやく取得できることも気に入っています。Shopifyのユーザーインターフェイスは驚くほどシンプルで、プラットフォームでの私たちのスタッフへのトレーニングが非常に簡単になります。それにより、プラットフォームを使用して稼働し、注文を行ったり、顧客データを検索したりすることができます。
Q.追加してほしい機能などはありますか?
CXの観点からは、プラットフォームまたは一括インポートを介して注文にタグを一括で追加するなど、注文をまとめて編集できると便利です。また、返金に関しても、一括でできるといいなと思っています。手動で注文することは少し面倒なプロセスなので、私たちがSKUを選択するときにアイテムの数を設定できるようになるとより良いでしょう。また、顧客とのやり取りをより簡単にパーソナライズできる機能があると便利です。
Q.今後新たにスタートするプロジェクトを教えてください。
最近、発売したThinx Activewearは、Thinxのテクノロジーがキュレーションされたワークアウトウェアのコレクションであり、生理中のワークアウトや自宅でのワークアウトをはるかに快適にします。